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空飛ぶソイ・ソーセージの全て

空飛ぶソイ・ソーセージとは、存在せず、かつふわふわと軽い何かである。そんなふうに細く長く続けていけたらいいですね。

案ずるより産むが安しな話(1) 美顔器とスキー

「案ずるより産むが安し」っていい言葉ですね。本当に、何事も実際にやってみなけりゃそれがどうなるかはちっとも分かりません。またやってみて初めて気づくこと、起ることだって色々あります。そういった、予想だにしていなかったトラブルを一つ一つ解決してゆくにつれ、自然と仕事が仕事を呼ぶようになり、ミスにミスを重ねていって、やがては面の皮が厚くなり気持ちさえたるむ。お客様のクレームも上司からの叱責も蕎麦屋の店員の舌打ちも、美顔器のスチームみたいに、いくら浴びたってへっちゃらぽんよと、しかしここまで達観するのは相当のベテランの話であって、裏を返せば「安し」なんて言っても初めから安らかに産めるかと聞かれればそんなわけはなく当然苦しい、無論初めは失敗する。しかし失敗しなけりゃ、つまりただ考えていただけじゃァ、それをやるってことが具体的にどういうことなのか、またはそれに取り組む自分に足りないものは何であるのかが、いつまでもはっきりしないわけです。
 例えばスキーを始めるのだって、こうこうこう行ってここで曲がってターン、からのジャンプ、よし、ザッ、ザーッつって滑っちゃろうと、頭ン中でイメージだけ膨らませてたって仕方がない。リフトの降り口でこけてからが本番ですよ。では上達すれば変わってくるのかと言えばそんなことは多分なくて、下手なんで知りませんけど、そもそも滑るということ自体、自由自在に遊んでいるようでいて、その実情は自分では思うようにいかない流れや勢いに身を任せながら、要所要所で力を加えて、自分の進みたい方向へと徐々に軌道を調整する、というものであってそれ故に、滑りに自力や故意の寄与する余地なぞ、実のところはほとんどない。むしろそこで求められるのは、流れに乗ること、乗った流れを妨げないことなのです、知りませんけど。

 にもかかわらず、悲しいかなついつい力んでしまう。それも変に力む。そして変に力んでかえって失敗する。ならば問うべきは、何故力んだって仕方がないのに力むのか、ということでしょう。それは大抵、失敗を予め思い描いてしまっていて、その空想上のミスに何とか対処しようと、身構えてしまうからではないでしょうか。それでももし、想像した通りの失敗を犯したならば、まだいいんですけれども、とはいえミスしないよう、しないように気合を入れて準備をしてきただけにむしろ、恐れていた失態をやらかすことは稀であって、これに対して全く別のところから問題が生じてきた場合、うっかり狼狽してしまうと、あわあわあわとなった末に凍結する、なんてことにもなりかねない。いずれにしても失敗をもたらすものは、失敗することへの恐怖である。
 だからこそ、前もって失敗するかもってくよくよと、思い悩んでいたってしょうがない。いやそりゃ失敗はしますよ、失敗はするけれども、しかし物事は成功と失敗とに、1か0かに、きれいに区分できるものでは到底ないですし、だから当たり前に失敗したとしてもまだいくらでもやりようがある。そのやりようが、どのようなものであるかは、実際に失敗してみなくちゃ分かりませんが、でもお先真っ暗だ、なんて沈んで、自分から盲目にすすんでなっていたんじゃあ、導きの糸はか細く、わずかな光に微かに浮ぶものですから、解決の糸口だって、見つかるものも見つからない。大切なのは眼を閉じないないことです。自分の失敗から目を背けなけないこと、目を背けなければ、どんなに悲惨な現状でも、失敗と一括りにレッテルを貼ることはできないことも分かって、そこには自分のぎこちなさや対象そのものに内在する欠陥など、より分けてみれば細々とした瑕瑾や凸凹があるはずで、それら全てをいちどきに何とかすることはできないけれど、まあ7割6割ごまかせれば上出来で、2割1割しかできなかったとしても、やらないよりははるかにましです。つまり必要なのは、ある日突然目覚めたら手に入る百万馬力のスーパーパワーではなくて、あらゆる姿かたちで現われる問題に、そこそこに対処しだまくらかして、何とか乗り切る胆力であってこれは、まァミスっても何とかなるっしょって、ならないんですけど、でもならないならならないなりに、ならないからこその根拠の無い自信に根ざしているのです。

 初めに失敗ありき。だからこそ、悩みは失敗してから悩めば充分、起きた失敗にどのように、どれくらい対応するか、ということが問題となるわけですが、しかしその方法は失敗してみなければ分かりません。もっと言えば解決の仕方は、失敗の方からある程度、要請されるものでしょう。したがってあらかじめできることといったら、まっ失敗したっていいやって、へにょっとふにゃっとリラーックスリラックスしておくこと、くらいしかない。それでいいのだ。(つづく)